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東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)134号 判決 1970年5月28日

原告

ザンドツ・アクチエンゲゼルシャフト(スイス国)

代理人弁理士

玉置徐歩

復代理人弁理士

奥山恵吉

被告

特許庁長官

荒玉義人

指定代理人

狩野有

外二名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

この判決に対する上訴のための附加期間を九〇日とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判<略>

第二  請求の原因

原告訴訟代理人は、請求の原因として次のとおり陳述した。

一  特許庁における手続の経緯

<略>

二  本願発明の要旨

アミノ、アルキルスルホニル、ベンゾールあるいはアミノ、アルキルスルホニル、ナフタリン一モルを左記式(1)

の第三級アミン一モルとカップリングし、その反応生成物を、Rがヒドロキシアルキルである場合に、一〜五個の炭素原子を含有する酸あるいはその官能誘導体の一つでエステル化することを特徴とする非水溶性モノアゾ染料の製法(式中Rは一緒にして少なくも一個の陰性置換基と、少なくも一個の水酸基あるいは一〜五個の炭素原子を含有する少なくも一個の・0・アシル残基を有する、互いに同一であるかあるいは相異なつた低分子アルキル残基、核Aはアゾ染料に普通な、水溶性にする基を除外した他の置換基を有し得るものである。)。

三  本件審決理由の要点

本願発明の要旨は前項掲記のとおりであるところ、その先願にあたることの明らかな特許第三一四、九六一号発明(一、九五七年(昭和三二年)七月二六及び同年八月三日ドイツ国特許出願に基づく優先権主張)の発明の要旨は、「少なくとも一個のハロゲン原子及び、あるいは一個のアルコキシ基、アシルアミノ基、トリフルオルメチル基、シアン基、アルキルスルホニル基及び、あるいは、事情によつては置換された、スルホン酸アミド基を含有する芳香族アミンの、スルホン酸基とカルボキシル基とを有しないジアゾニウム化合物を、左記一般式

のスルホン酸基あるいはカルボキシル基を有しないアミンにカップリングさせることを特徴とする、スルホン酸基及びカルボキシル基を有しないP・アミノアゾ染料の製法(alk1とalk2は二価の低分子アルキレン残基、Rは低分子アルキル残基を意味する)」にあるものと認められる。そこで本願発明と先願発明とを対比検討すると、ジアゾ成分については、本願発明におけるアミノ、アルキルスルホニル、ベンゾールあるいはアミノ、アルキルスルホニル、ナフタリンは、先願発明におけるアルキルスルホニル基を有する場合の芳香族アミンの範疇に包含されるから、両者は一致する場合があり、カップリング成分については、先願発明の一般式で示されるものが、本願発明の(1)式で示される化合物の範疇に包含されるから、両者は一致する場合があることが明らかである。このように、右両発明は、ジアゾ成分、カップリング成分が一致する場合があり、そのカップリングも常用の操作に従うものである以上、同一の染料化合物を生成する場合があることは明らかである。したがつて、右両発明は、共通する技術思想を有するものというべく、その間に区別しうる格別の相違点を発見することもできないので、同一発明と認めざるをえず、本願発明は旧特許法八条の規定により特許することができないものである。<以下略>

理由

(争いのない事実)<略>

一  (本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二  特許第三一四、九六一号発明が本願発明の先願にあたること及びその発明要旨が本件審決認定のとおりであることは、原告の認めて争わないところであり、本願発明の要旨と右先願発明の要旨とを対比すると、そのジアゾ成分及びカップリング成分において共に一致する場合があることは、本件審決の説くとおりであり、また、カップリングについても特段の操作の限定がないのであるから、本願発明と先願発明とは、同一の染料化合物を生成する場合があることは、明らかなところであり、したがつて、両者は同一発明といわざるをえない。

原告が本願発明と先願発明の相違点として主張するところは、右のとおり、両発明において、各成分の一致する場合があり、したがつて同一染料を生成することになる場合を包含している事実と矛盾するものではなく、したがつて、右認定をくつがえし、両発明を別異のものとすべき根拠とはなしえないものである。この点において本件審決を違法とする原告の主張は、採るをえない。

(むすび)

三 右のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由のないものである。よつて、これを棄却する……。(服部高顕 石沢健 滝川叡一)

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